信頼されない人は「口の堅さ」がわかってない

max-bender-431968.jpg

2008年にツイッターが日本に上陸して少し経ったころのことです。

ある広告代理店で、業界の大御所をはじめ誰からも可愛がられていた当時20代の営業マン、A君がいました。スピード感は抜群。何を頼まれてもノーと言わない。笑顔を絶やさず、飲み会では率先して盛り上げ役に回る。その企業の若手ホープといえる存在でした。

ところが、広告代理店との新規パートナー契約を検討していた知人が、「A君の勤める会社は候補リストから外した」というのです。理由を聞くと、「代理店探しのついでにA君のツイッターを見たら、仕事仲間や取引先の人への愚痴、自宅に届く宅配便の不在通知への文句など、日常的な罵詈雑言の嵐だった」と話し始めました。

知人は普段のA君からは想像つかない攻撃的な文言に、「本当に同一人物なのか?」と目を疑ったそうです。ただ、ビジネスパートナーになった時に不平や不満をつぶやかれてはたまらない、と怖くなって候補から外したそうです。

A君のように、SNSをプライベートの「日記」のように使い、その日その時の感情すらも吐き出す場にしていることはありませんか?

ネットの普及で、誰もが不特定多数の人に「情報を発信」できる時代になりました。全世界と「つながる自由」を得たということです。

一方、同時に背負ったのは、全世界から「閲覧される不自由」です。SNSでビッグチャンスを得られる半面、「悪気ない発言」「何気ない一言」で信頼を失う人も増えています。

どんなに小さな一言であっても、それらはみな、他人からすると「その人」や「その人の会社」を選ぶ貴重な判断材料になっています。

SNSの発達で、今や「フツーの人」であっても「自分の発信」に戦略をもつことが必要な時代になったのです。しかし、

・ノリで写真をSNS に投稿し、職を失った

・過去のつぶやきを理由に内定が取り消された

・一緒に写った人に無許可で写真を公開した後、疎遠になった

など、ネットやSNSでの発言で失敗する人は後を絶ちません。

人の採用やビジネスパートナーの見極めに、ネットでの発言や活動歴を調べるのは当たり前のこととなりました。

個人の名前は、思っている以上に「検索されて」いるのです。

リアルの世界でどんなに能力や技術が秀でていても、ネットでの投稿内容が稚拙だったり、感情的なコメントが多かったりすると、気づかぬうちにフォローを外され、「人とのつながり」が遮断されていきます。

実績が認められながら、なぜか人から信頼を得られない人は、ひょっとしたら秘密を守れないとか、余計な一言を言ってしまうといった傾向があるかもしれません。このような特徴や傾向は、本人もなかなか気づきにくいことです。

では、リアルとネット、今や「ふたつの世界」で生きる私たちに必要な「情報を扱う力」とは何でしょうか?

・友人、知人を紹介される
・クライアントとの会食に誘われる
・意思決定の場に呼ばれる
・新規プロジェクトメンバーに抜擢される
・重要顧客を紹介してもらえる
・プライベートな飲み会に誘われる
・昇進のチャンスを得る
・休日のイベントに声がかかる

こうした「人とのつながり」に関わる大小さまざまな「誘われる」「選ばれる」チャンスを得るための、地味ながらも重要なポイントの1つが、「口の堅さ」です。

それは、情報を「発信する」と同時に「発信しない」ことを意識すること、と言えます。

「無口になれ」ということではありません。一拍おいて、考える。

時と場合、相手や内容をみながら、「言う」「黙る」「伝える」を瞬時に見分ける能力、つまり、「言葉を選ぶ力」と言えます。

では、誰もがいつでも発言できる自由を得た今、自らの身を守るための「言わないこと」とは何でしょうか? その参考になるのが、お茶席でのマナーです。

住職で裏千家の茶人でもある方のお話をうかがったことがあります。

お茶席とは、もてなす人と招かれた客とが対等な立場で、俗世間と切り離された空間を楽しむもの。だから、“俗っぽい話” は避けるのがマナーなのだそうです。それを表すものとして、次の言葉を教えてくださいました。

「我が仏 隣の宝 婿舅 天下の軍 人の良し悪し」

これは、利休の弟子、山上宗二が茶席で話題にすべきではないことを肖柏夢庵という連歌師の狂歌を引用して教えたものだそうですが、どれもが現代の日常のコミュニケーションにも通用します。

「本当に言うべきなのか?」「発信すべきなのか?」「情報を発する場として、この場、シチュエーションは適切なのか?」「このタイミングで良いのか?」

など、一瞬でも考える習慣をもつことができれば、相手を目の前にした現実世界でも、あるいは不特定多数の人に向けたネットの世界でも、大きな失敗は避けられるでしょう。

「一拍おく」

この「わずか5秒」が、「つながり」を維持する力を高めてくれるはずです。

POJIRAJI BLOG